リアリスト〜星座占い〜
それは普段と何も変わらない、ありふれた日常、朝の出来事。
『今日、最も運勢が良いのは獅子座のアナタ!
普段なら難しいと思える事も今日ならすんなり成功しちゃうでしょう!
思い切って新たなことに挑戦するのも吉!ガンバってね〜!』
テレビから流れてくる元気あふれる若い女性の声。
今、巷で話題のZTVのニュース番組が提供する朝の星座占いだ。
「やった!私よ私!」
朝から大声で喜びを表すブルマにベジータは頭痛がする思いだった。
何が星座占いだ。本当にくだらない。
そもそも占い自体が詐欺みたいなものだろうとベジータは常々思っていた。
ブルマの知り合いに占いで大儲けしているババアがいるというが何故詐欺罪で捕まっていないのか疑問である。
「山羊座のベジータは6位かあ。良くもなく悪くもなく、本当、つまんない順位よね」
「……。」
本来、ベジータには誕生日が無かった。
いや、無かったというより正確には、ベジータは自分が生まれた年は知っていたが、何故か生まれた日を知らなかった。
親が彼に教えなかったのか、教えられたが唯忘れてしまったのか、それすらも記憶にない。
どちらにしろ、それまでずっと戦いに明け暮れて誕生日など一度も祝ったことのなかったサイヤ人の王子である自分にはどうでもいいことだった。
しかし、ブルマにとってはどうでも良くなんかなかったらしい。
ベジータが自分の誕生日すら正確に覚えていないのを知った彼女は彼の境遇に同情し、彼の代わりに涙を流した。
当時のベジータにはブルマのとった行動はとても奇妙に映った。本当に不可解だった。
それから暫くして、ブルマは、ベジータがフリーザに殺されて、神龍によって再び蘇った12月24日を彼の誕生日に指定した。
その時はフリーザに殺された日を自分の誕生日にするなど冗談じゃない!と断固反対の姿勢を見せていたベジータだったが、不幸を幸福に変えると言い放ったブルマの持論に胸を打たれ、彼女の希望を受け入れることとなった。
それなのに…。
つまらないとは随分な言い方である。
「いいか?星座占いなど唯のまやかしに過ぎん。詐欺師の嘘に振り回されてるんじゃない」
きっぱりと現実を突き付けてやった。どうだ、参ったか。
「何言ってるのよ。この占いはね、当たるって世間では大評判なの」
全く、この女は素直に主人の言葉を信じられんのか?
当たると大評判?阿呆か!
そんなの詐欺師に金を捕まされた共犯者が世間に垂れ流してるデマに過ぎん。
「よく聞けよ。この地球には約72億人の人口が存在する。そして星座は、この星では12か?13か?まあいい。12星座としてだ、12星座だ!72億を12で割るといくつだ?」
「6億よ」
「そう!6億だ!!」
ビシッとベジータはブルマを指差した。
「今日、お前を含め6億の人間全てが同じ運命だと本気で思えるか?」
突き出している手とは反対の手を腰に当てどうだと勝ち誇ったように彼は言い放った。
ふふふ、反論できまい。
が…
「……。アンタって本当にロマンの欠片もない人なのね。」
ブルマの呆れたような声が返ってきた。
ろ、ロマン…。
「アンタみたいなリアリストって、ほんっとうにつまんないわよ」
馬鹿じゃないの?と捨て台詞を吐いて彼女は部屋を出て行った。
おそらく仕事にでも行くのだろう。
「……ふんっ」
折角、真実を諭してやったというのに無礼な女だ。
でもちょっとだけ寂しい…。なんてことはないぞ!断じて!!
ベジータは自分も部屋を出でるとそのまま重力室に向かい、そこに閉じこもると日が暮れるまでトレーニングに勤しんだ。
おわり
ーーーーーーーーーー
某チャンネルでは今でも朝の占いをやってるんでしょうか?
最近テレビをあんまり見ないので…